西村武訓

「商店街と映画館」


私は、紙問屋の次男として生まれ、商店街にある小売店舗(兼)自宅で育った。

幼い頃から 私は、映画好きで伊勢市内にあった3館の映画館に、毎週日曜、兄や友人と通っていた。一昔前の話である。

その後 いつの間にか、商店街からはお客さんの足が遠のき、映画館も今では「伊勢 進富座」1館のみになってしまって

いる。昔、父親は良く憤慨していた。「ガソリン代をかけて、郊外のスーパーに行ってどうすんのや!」

ただ、今では 私を含め両親も、郊外の商業施設に車で出掛け、買い物をし、シネコンにも足を運ぶようになっている。

『朝日のあたる家』篇の撮影時にも、小道具や飲物などは、即座にいつでも手に入る便利なホームセンターやコンビニ

エンスストアが頼りになっていたのは事実である。歯がゆい。

結果、地方の中心市街地から賑わいは消え去り、車を利用できない高齢者などは逆に不便になっている。商店街も映画館

も自力の踏ん張りは必須だが、近隣住民の協力なくしては、未来はないかもしれない。

大型ショッピングモール、シネマコンプレックス。

全国、何処へ行っても同じような怪物が腰を据えている現状には、不気味でコンプレックスを感じる。


私が故郷に居た1980年代後半、日曜日でさえも、映画の観客は私を含め友人3名だけで、映画館はほぼ貸切状態の時も

あった。時折、つまらない映画を何度も観ていると退屈になり、舞台に上がって映写機から放たれる光を全身に浴び

ながら踊っていたりした。映写技師も客席に降りて来て、我々に注意もせず、感慨深い表情で映画を眺めていた。今、

振り返ると、映画と映写技師には申し訳ない事をしていたなと謝るのみである。

ところで、商店街を舞台にした映画は世の中に沢山あると思うが、『朝日のあたる家』篇に関連していると思う作品が

いくつかある。

その中の1つ、「エクスプローラーズ」(1985)というSFアドベンチャー映画では、イーサン・ホーク、リバー・フェ

ニックスらが扮する3人の少年達が、手作り宇宙船で、宇宙から地球に帰ってきた際、商店街の替わりにスーパーマーケ

ットが出来始めていることに気付く少年の台詞がある。

また、「ムーンライト・マイル」(2002)というヒューマンドラマでは、アメリカがベトナム戦争に揺れていた1973年、

ダスティン・ホフマン扮する 娘を亡くした父親が、娘の婚約者であったジェイク・ギレンホール演じる青年と不動産業

に精を出し、郊外型ショッピングモール建設を推し進めるため、商店街の地上げをしている。どちらも、映画の中で訴え

たい主旨は他にあると思うが、商店街育ちの私には、時代の変貌が気になった。


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